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  伊藤範子第1句集『蓮ひらく』


                              角川書店

 この度、伊藤範子さんが、角川書店より第1句集『蓮ひらく』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
 範子さんは平成16年に「伊吹嶺」に入会しました。そして、草創期のインターネット部のネット句会に参加し、5年先輩の河原地主宰とともに切磋琢磨してきました。さらに、「中日俳句教室」では、栗田先生から俳句の基本を学んできました。その成果があって、平成20年には、伊吹嶺新人賞を受賞され、同人に推挙されました。
 この句集は、平成16年から令和2年までの「伊吹嶺」誌に掲載された句、俳人協会大会入選句、伊吹嶺賞応募句などを含めた1100余句の中から365句を河原地主宰に選んでいただいたものです。
 そして、句集名『蓮ひらく』は、
   蓮ひらく祈りの十指解くやうに  平成19年 自選
から採ったものです。この句は「伊吹嶺」全国俳句大会で多くの選を受けた句であり、主宰の序文には「清らかな範子さんの俳句世界を象徴する一句」とあります。

 この句集には、家族に材を取った句が多く見られます。これは、範子さんの「自分史」を残したいという意向を受け、河原地主宰が家族を詠んだ句を中心に据えようという方針を立てたからです。
 範子さんはご家族を詠んでいても、ご自身の気持ちをあらわにせずに、季語や物、周りの景に溶け込ませています。それがためしみじみとした情感をもたらしています。
   ものの芽や娘の下宿まで坂登る  平成16
   母逝きて長閑な日こそ淋しけれ  平成16
   初鏡父似の眉をととのふる    平成17
   肩うすくなりたる父や遠花火   平成17
   抱き直す父の骨壺夕桜      平成19
   門火焚く父似母似の顔寄せて   平成27
   叱られし日の幸せや墓洗ふ    平成30


 以前、範子さんの伊吹嶺賞応募作品「レガッタ」を読んだことがあります。題材が目新しく、佳句ぞろいの素晴らしい作品でした。そのとき、どうやってレガッタという題材を得たのか疑問でした。この句集を読んでその謎が解けました。
 ご主人は学生時代、漕艇部に属し、社会人になってからも各種の大会に出場しています。平成24年にはドイツで行われた国際競技にも参加しています。忘れてはならないのは、そこには精一杯声援を送る範子さんの姿があるということです。
   レガッタの夫へ母校の旗振れり  平成20
   エイト漕ぐあかがね色に日焼して 平成20年 自選
   汗の胸大きく反らしエイト漕ぐ  平成20
   レガッタの岸にホップの花揺らぐ 平成24
   蒲の穂の絮とぶ岸辺エイト漕ぐ  平成24
   しんがりの艇へ声援秋日傘    平成24年 自選
   胸厚き白髪のクルー天高し    平成24


 最後に句集の帯に載っている自選12句のうち、まだ紹介してない9句を紹介します。
   父とゐるやうな匂ひや落葉焚   平成18
   古里の涼しき土間に迎へらる   平成19
   蒼天をのぼりつめんと鷹柱    平成21
   海蹴つて空蹴つて海女鮑獲る   平成23
   秋の灯を運河にこぼし花市場   平成24
   こまやかな影を重ねて吊し雛   平成26
   千切れ飛ぶ雲の白さよ子規忌来る 平成29
   鷹鳩と化して遺跡の列柱に    平成30
   ただいまと言へば金魚の泳ぎ出す 令和元年


      平令和3年8月        新井酔雪


発行所:公益財団法人 角川文化振興財団
発行者:宍戸健司
B5版  214頁
定価:本体2700円(税別) 




伊藤範子さん



蓮の花

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