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伊吹嶺選書


 水野順一句集『卒 寿』
             

 この度、水野順一さんが伊吹嶺選書として、第1句集『卒寿』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
 平成22年、水野さんは、職場のお仲間だった方に誘われて、「織部句会」、そして「伊吹嶺」に入会しました。
 そして、令和36月に卒寿を迎えられ、その記念にと句会のお仲間に勧められて、この句集を上梓しました。これは、俳句を始めて10年ほどのことで、その熱意と俳句の上達には驚嘆します。
 この句集は、「伊吹嶺」誌に載った300句余りの中から205句に絞り収めたものです。そして、年代順に「称名H2225」「桐咲くH2629」「落葉時雨H30R3」の3章立てになっています。句集名『卒寿』には、水野さんが90歳まで健康で来られたことへの感謝の意が込められています。

 一読したとき、この句集から「祈り」を感じました。
 一つ目の「祈り」は信仰です。神道・仏教、神社仏閣の句が多く見られました。
  
 巻き髪の巫女に礼受く蟬時雨  (称名)
   白萩の茂みに隠れ石仏     (称名)
   初詣五社を巡りて一万歩    (桐咲く)
   磨崖仏の御姿白し夏の山    (桐咲く)
   盆仕度机に開く正信偈     (落葉時雨)
   念ずれば末吉と出し初みくじ  (落葉時雨)

 二つ目の「祈り」は亡くなった方への鎮魂です。即物具象に詠んでいるので、思いがしみじみと伝わります。
  
 凩に旅立つ人の薄化粧     (称名)
   友の忌の遺影に映る若楓    (称名)
   花冷や棺に納めし朱印帳    (桐咲く)
   焼酎を友の末期の水とせり   (桐咲く)
   父の忌の仏具磨くや春隣    (落葉時雨)
   梅雨寒や白くて軽き友の骨   (落葉時雨)


 三つ目の「祈り」は滅びゆくものへの哀惜です。季語が明るいので、気持ちが救われます。
   
廃校の厚き鉄扉へ花吹雪    (称名)
   帰り花べんがら塀の廓跡    
(称名)
   廃業の町医の庭に薔薇一花   
(桐咲く)
   柿たわわ機織の音消えし路地  
(桐咲く)
   廃線の土手駆け上り土筆摘む  (落葉時雨)
   桜散る礎石一つの坊の跡    
(落葉時雨)


 次に紹介する句は、この句集の一番最後に置かれた句です。一読感銘を受けました。今の水野さんの姿と心境、そしてこの句集の象徴であると思います。
   
卒寿なるも息災ですと墓洗ふ

       令和4年5
       (新井酔雪)

発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
B6版  111頁




水野順一さん
河原地主宰と栗田顧問とともに

【申込み方法】
矢野孝子さんに葉書あるいは電話、Eメールによりお申し込みください。
〒489-0918
愛知県瀬戸市北脇町255 グレースメゾン新瀬戸Ⅱ504
矢野孝子
電話 090-8551-4830
Eメール nikmik-yuko@kdr.biglobe.ne.jp

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