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伊吹嶺自註俳句シリーズC


 『櫻井勝子集』
             

 この度、櫻井勝子さんが伊吹嶺自註俳句シリーズCとして、句集『櫻井勝子集』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
 勝子さんは、昭和32年に俳句結社「阿寒」と「青炎俳句会」に入会します。その後、平成9年に俳句結社「つちくれ」に入会し、「伊吹嶺」には平成23年に入会します。この句集は平成19年から令和2年の間に詠まれた句の中から300句を精選したものです。

 女性はよく家族を詠みます。勝子さんもご家族を詠んでいますが、その中で6年間介護された姑さんを詠んだ句が目を引きました。その姑さんも平成20年にお亡くなりになりましたが、その後も姑さんを偲んで詠まれています。勝子さんの誠実なお人柄が表れていると思います。
   
灯を一つ残す介護や地虫鳴く   平成19
   書き出しは虫の夜介護日記かな  平成19
   介護の夜寝茣蓙に歌ふ子守歌   平成19
   冬座布団しばし枕に介護の夜   平成19
   春雷の一つ大きく姑逝けり    平成20
   彼の世にも螢火姑の百日忌    平成20
   姑のメモ残る種入れ袋かな    平成27


 勝子さんのお住まいは一宮市です。一宮市はかつて織物の有数の生産地でありました。のこぎり屋根の織物工場が並び、女工さんも多くいました。しかし、戦後の産業構造の推移により工場の数は減っていきました。衰退していく機の街の現状を詠んでいて、哀れを感じます。
   
機町の路地の祠に鏡餅      平成24
   閂の錆びし機屋や凌霄花     平成24
   月涼し機路地に聞くピアノ曲   平成24
   機廃れ蔓薔薇からむ空宿舎    平成29
   虫に闇委ね機織る灯を消しぬ   平成29
   機町の風を汚して秋刀魚焼く   平成30
   干菜吊る機工場の浅き軒     平成30


 勝子さんの伴侶である幹郎さんは美術教師。ご長男は日展の彫刻家。ご自身は絵などを嗜んでおられます。まさに美術一家です。俳句も美術に関わる作品が多く見られます。
   
ちぎり絵のちぎり屑増え秋灯   平成25
   冬ぬくし轆轤より花器切り離す  平成26
   月冴ゆる青の時代のピカソの絵  平成26
   自画像のゴッホに見られ冬ごもり 平成26

   雌型取る寒九の水をあびせつつ  
平成29
   裸婦像は未完や玻璃に冬の月   平成30
   裸婦像の帰り来し部屋青葉の夜  令和元年



発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
小B6判 150頁
頒価1000円  




櫻井勝子さん

【申込み方法】
著者へ直接葉書あるいは電話によりお申し込みください。
〒494-0007
愛知県一宮市小信中島字郷西720
櫻井勝子
TEL:0586-61-0548

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