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2018年7月号 (俳日和 六)
 

 
  まず3ヶ月

                              河原地英武

 石の上にも三年などというけれど、三年の辛抱はけっこうきつい。わたしは何でも三ヶ月単位で考えている。三ヶ月がんばれば、目に見えて変化が現れる。これはわたしの経験に裏打ちされた持論である。

 たとえば外国語の勉強。わたしは学生時代、外国語(ロシア語)を専攻したので、人一倍語学の習得に時間を費やし、いろいろな勉強法を試みたが、やはりいちばん難しいのはリスニングである。ネイティブスピーカーの話す音声教材やニュースなど、最初のうちはさっぱり聞き取れない。自分にはつくづく才能がないのだと絶望的な気分に陥ることはしょっちゅうだった。しかし結論をいえば、語学に才能は関係ない。ただ慣れの問題である。外国語のニュースにしても、無理に聞き取ろうなどと欲は出さず、シャワーを浴びるように、毎日三十分でよいから聞き続ける。すると三ヶ月も経つ頃には、だいぶ言っていることが理解できるようになる。耳が慣れてくるのである。

 今年から書道教室に通っている。まず道具一式を購入し、正しい姿勢と筆の持ち方からレッスンが始まった。そして先生が書いてくださった千文字(王羲之の文字を集めたとされる教材)をお手本にひたすら模写するのだ。お手本をコピーに取り、その上に半紙を重ねてなぞるのだが、最初は線一本からして思うように引けない。自分が書くと、ぶよぶよとして骨のない字になってしまうのだ。筆がこんなにやっかいなものだとは知らなかった。力の加減も何もまったくコントロールできない。それでも先生のアドバイスを受けながらひらすら書き続けているうちに、いつの間にか筆づかいの感触がわかってきたのである。その心地よさが身の内にしみ込んできたとでもいえばいいのか。それがやはり三ヶ月ほど経ったときのことだった。