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2017年10月号 (232)
 
 句集『線描』                    栗田 やすし
 

 矢野孝子さんが第二句集『線描』(角川学芸出版)を近く刊行される。
 句集名の「線描」は、集中の
  
線描きのごとき寒林夕日落つ
に依る。夕日に透く寒林を「線描きのごとき」とは、実地に即した驚きであり、いかにも絵心のある孝子さんならではの確かな発見である。
 『線描』には、
  
ゴッホの黄ゴーギャンの赤もみぢ照る
  ゲルニカを観る汗の児を抱き寄せて

など、絵画や画家に関わる句が多い。二句目はドイツ空軍による無差別爆撃を描いたピカソの絵の前に立って詠んだものであろう。「汗の児を抱き寄せて」が具体的で実感が強く、作者の気持ちのこもった佳句である。
 孝子さんは平成二十五年に
  
家移る支度茎石磨き上げ
  引越しや宝石箱へさくら貝

外の二十句で第十一回伊吹嶺賞を授賞している。
 この受賞辺りから孝子さんの句に変化が見られ、身辺詠が多く見られるようになるが、これは転居が契機となったものと思われる。
 孝子さんは古稀を迎えられ元気溌剌、句作に励むとともに、句会の指導者として、また、インターネット部の主要メンバーとして活躍されてきた。健康に留意され今後ますます活躍されることを期待したい。