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2018年12月号 俳日和(11)
 
  吟 行

                              河原地英武

 句会には大別して三つのやり方があるようだ。第一は、各人が家から三句か五句持ち寄って行う方式で、最もポピュラーなもの。第二は席題。誰かがその場で題を出し(普通は季語)、例えば二十分後に三句提出させるといった方法。そして第三が吟行である。

 このうち、わたしは長らく席題と吟行が苦手だった。特に吟行の場合は、当日まったく句が思い浮かばなかったらどうしようという不安が先立ち、事前にネットで行き先の情報を集め、一、二句、作っておくなどということをしたこともあった。

 現在はといえば、一番好きなのは吟行で、次が席題だろうか。そうなった理由は二つある。一つ目は単純な話で、このごろ日常生活が多忙になったせいである。家で句作の時間を捻出できなくても、吟行に出かければ必ず何句か作れる。句帳と筆記用具さえ持って行けば、出句までの一時間ないし二時間で、何句かものにすることができるのだ。今まで数多くの吟行に参加したが、規定数の句を揃えられなかったことは一度もなかった。たとえ心身の調子が万全でなくても、作句は可能だという自信が持てるようになった。そうなれば、予め準備のいらない吟行ほど気軽なものはない。

 二つ目の理由は、吟行で様々な事物と出会うことによって、思わぬ佳句が授かることを知ったからである。まさに授かるとしか言いようのない会心の作ができるのは、わたしの場合、きまって吟行時である。名所旧跡を訪ねても、別に国宝級の仏像や建造物を詠む必要はない。それよりも、そこに植えられている草木や、地べたを這っている虫などを凝視していると、何かひらめくものがある。その一瞬を句にすることが楽しい。

 自分らしい句を作っているうちはまだまだだと思う。偶然の力を借り、自分らしくない句、自分の殻を破る句、自分で自分の作に驚くような句を吟行で得たいと願っている。