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2018年9月号 俳日和(八)
 

 
  自然雑感

                              河原地英武

 6月は大阪府北部を震源とする大地震に肝をつぶしたが、7月は西日本に甚大な被害をもたらした豪雨に茫然とした。ガルシア・マルケスの『百年の孤独』に、4年11ヶ月と2日雨が降り続ける話が出てくるが、この災厄がわが国にも降りかかる予兆ではないかなどとあらぬ妄想をしてしまった。

 そしてこの猛暑である。38度から40度を越える気温はもはや災害レベルだ。今年あまり蚊を見ないのは、35度以上になると活動を停止するせいだという説明をネットで読んで納得した。わたし自身もあちこちでへんな現象を目にしている。蟬の幼虫が殻から抜け出せず死んでいるのを二度三度目撃したが、この暑さに力尽きたのか。炎天下の地面に蟻がいないのでいぶかしく思ったら、ちゃんと日陰を歩いていた。彼らも生命の危険を感じているのだろう。自転車を止めて信号待ちしていたところ、わたしの影に雀が入ってきたのにも驚いた。よほど憔悴していたのにちがいない。

 筆者の名前は失念したが、昔、日欧の自然観を比較した評論を読んだことがある。欧州では自然は人間と敵対する存在であり、それを征服した証として、左右対称の人工的な庭園が造営される。それに対し、日本では自然は友のように親しい存在である。それゆえ庭園も極力自然との調和を図るように設計されるのだ、というのである。

 だが、欧米からの観光客はもとより、日本以上に気温が高いはずの東南アジアやアフリカから来た人々が、わが国の暑さに辟易している様子がテレビなどで紹介されているのを見ると、どうも先の説は疑わしくなってくる。四季折々の美しさは太鼓判を押していいが、住みやすさの点では、日本の自然はかなり厳しい部類に入るのではないか。その自然と何とか折合を見出そうと奮闘しているのが昨今の俳人かもしれない。