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2018年11月号 俳日和(十)
 
  自然詠

                              河原地英武

 「俳句」十月号の「大特集」は「実作に役立つ!俳句基礎用語集」である。四十ページ近くを割き、百ほどの用語が収められている。「一物仕立て」と「取り合わせ」、「一句一章」と「二句一章」、「兼題」と「席題」、「類句」と「類想」、「直喩」と「暗喩」など、知っているつもりでも意外と説明しづらい語が分かりやすく解説されている。ここに書かれていることが皆の共有知識となれば、句会での意見交換もだいぶスムーズになるはずである。ぜひ活用してほしい。

 伊藤伊那男氏が担当しているページでは、俳句がいくつかに分類されている。すなわち人事句、境涯俳句、時事俳句、吾子俳句、心象俳句、写生俳句、忌日俳句である。わたしは教師をしているせいか、学生たちを対象にした人事句を作ることが割と多い気がする。伊藤氏によれば、人事句とは「人間と人間社会に現れる事柄を詠む」もので、「具体的には、自然詠とは反対に、親子関係、友人関係、兄弟関係、夫婦関係、作者自身、生老病死、生活、世相などに係る」俳句が皆これに当てはまる。

 最近のわたしは、この人事句とは対極にある自然詠に強く惹かれている。つまり人事句とは逆に、「人」が一切出てこない句、専ら自然に材を取った句である。むろんこれは、人事句よりも自然詠のほうが格が高いと思うからではない。優劣はまったく関係ない。ひとえにわたしの現在の心境によるものである。

 せめて句作のなかでは諸々の人間関係から解放され、一人の人間として虚心無心に自然と向き合いたい。さらに言えば、自分を空っぽにして、人間であることすら忘れてしまうような境地に至れないものかと夢想するのだ。路傍の小さな生き物や植物を凝視し、それらと心を通わせることができたらどんなに快感だろう。