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選句結果
     
第153回目 (2012年1月) HP俳句会 選句結果
【  河原地英武 選 】
  特選 図書館の二階の茶房日脚伸ぶ 康(東京)
   大寒や天保五年の手水鉢 田村幸之助(鈴鹿市)
   数へ日や唱歌流るる喫茶店      山渓(愛知県)
   凍星や電照菊の棟灯り さんせん(名古屋市)
   出勤の町まだ眠る寒満月 ゆうこ(刈谷市)
   初買のつりを投ずや義捐金 兵(滋賀県)
   幼子の纏いてきたる柚子湯の香 詩音(福岡県)
   初御空宮の太鼓の突き抜くる 一橋(横浜市)
   布を裁つ畳の上に冬日差し 弘子(瀬戸市)
   去年今年逝きし人々恋しかり 桔梗(神戸市)
【  坪野洋子 選 】
  特選 幼子の纏いてきたる柚子湯の香 詩音(福岡県)
   指先で探る鍵穴日短か 総帆(潮来市)
   朝寒や紙に切られし傷疼く      雪絵(前橋市)
   里山を越え来る除夜の鐘一つ 安藤一紀(愛知県)
   魚屋の砥石新し年の暮 眞人(さいたま市)
   陶土挽く冬の小鹿田(おんた)の水の音 梦二(神奈川県)
   講堂に墨の匂へり二日かな 兵(滋賀県)
   武蔵野の蒼穹澄みて寒に入る 惠啓(三鷹市)
   響めける熱田の杜や初えびす 近藤信男(東京)
   時雨来る鋸屋根の残る町 松岡 美千代(愛知県)
【  国枝 隆生 選 】
  特選 朝寒や紙に切られし傷疼く 雪絵(前橋市)
   指先で探る鍵穴日短か 総帆(潮来市)
   図書館の二階の茶房日脚伸ぶ      康(東京)
   武蔵野の土くろぐろと霜柱 栗生晴夫(川崎市)
   子規庵の庭低く飛ぶ冬の蠅 安藤一紀(愛知県)
   魚屋の砥石新し年の暮 眞人(さいたま市)
   納経の墨の滲みし寒の入り ゆうこ(刈谷市)
   時雨来る鋸屋根の残る町 松岡 美千代(愛知県)
   幼子の纏いてきたる柚子湯の香 詩音(福岡県)
   布を裁つ畳の上に冬日差し 弘子(瀬戸市)
【  中野一灯 選 】
  特選 出勤の町まだ眠る寒満月 ゆうこ(刈谷市)
   川風の吹き募りくる寒暮かな 須藤曉風(前橋市)
   武蔵野の土くろぐろと霜柱      栗生晴夫(川崎市)
   朝寒や紙に切られし傷疼く 雪絵(前橋市)
   煙に顔そむけて掘りしとんど餅 清風(鳥取)
   どんど焼火消袢纏控へをり 山下みつぐ(北九州市)
   駅の背の坂は急なり笹子鳴く 松井徒歩(名古屋市)
   時雨来る鋸屋根の残る町 松岡 美千代(愛知県)
   幼子の纏いてきたる柚子湯の香 詩音(福岡県)
   港町除夜の汽笛の鳴り交はす 一橋(横浜市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、詩音さん(福岡県)でした。「伊吹嶺」1月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


    2012年1月 伊吹嶺HP句会講評     国枝 隆生

35 朝寒や紙に切られし傷疼く         雪絵(前橋)

 こういう経験はよくありますね。真新しいコピー用紙などうっかりすると紙の端で
指を切ることがある。それがまた痛い。〈紙に切られし傷疼く〉という体験に対して、
季語の「朝寒」がよく効いており、あたかも鎌鼬に指を切られたような印象でした。
季語の寒さが指を切ったのであろう。

79 幼子の纏いてきたる柚子湯の香        詩音(福岡)

 風呂上がりの幼子が飛び回っている様子がよく見えます。その幼子から柚子湯の香
りが広がっている。そこには一家団欒の様子まで見えてくる。この幼子が家族の中心
人物である。〈纏いてきたる〉の写生がほのぼのとした様子を代弁していると思いま
した。なお〈纏いてきたる〉は〈纏ひてきたる〉にしたいと思います。

13 図書館の二階の茶房日脚伸ぶ         康(東京)

 この句は素直な表現の句で、〈図書館の二階の茶房〉と季語の〈日脚伸ぶ〉だけの
組合せで作っています。冬も終わりに近づくにつれ、図書館の中が暖かいのであろう。
その喫茶店のコーヒーを飲んでいるとつくづく日脚が延びてきたという実感が素直に
響いてきます。

32 武蔵野の土くろぐろと霜柱          晴夫(川崎)

 関東ロームは火山灰が堆積した赤土であるが、表土は黒い。この土は黒い土でなけ
ればならない。その黒土に霜柱が立つからこそ、霜柱が白く浮き立って見える。霜柱
に対して、固有名詞の「武蔵野」がよく効いていると思いました。


以下応募作品から気の付いたことを述べます。

1.以前も言ったと思いますが、俳句の17音だけでは十分思いを述べることは出来
ません。従って物に託して、物で思いを伝えるしかありません。しかしややもすると
、結論を急ぎすぎて、いきなり結論の見える観念で詠む句が見あたります。そうする
と俳句は嫌みになってしまいます。今月はそれほど強い観念句はありませんでしたが、
 
49 つつがなく齢重ねて今朝の春

 新年を迎えて〈齢重ねて〉の事柄に対して〈つつがなく〉はあまりにも当たり前の
観念です。齢を重ねた実感として、何か具体的な物、行動など客観的な表現で詠むと、
読者に作者の思いは届くものだと思います。

86 去年今年逝きし人々恋しかり
 
 この句も〈逝きし人々〉に対して、〈恋しかり〉といきなり結論を言ってしまって
は頭で作った観念句になってしまいます。〈恋しかり〉を別な表現で、亡くなった人
に対する思いが見えるような句となるとよいと思います。

2.次にこのHP句会では少なくなったとは言え、相変わらず、理屈で作った句が見
受けられました。理屈は種明かしが見えてしまえば、読者に感動を伝えることが出来
ません。

2 すき焼きや婿殿少しメタボ気味

 この句は俳諧味を狙った句と思いましたが、結論の〈メタボ気味〉は婿さんがすき
焼きを食べた結果、少しメタボ気味になってしまったと言うことを詠みたかったので
しょう。〈すき焼き〉と〈メタボ気味〉は原因と結果の理屈で通りますね。

39 醜草も七日ばかりは主役なり

 この句を解釈してみますと、普段は見向きもされない雑草(醜草)も七日ばかりは
七種粥に使われる主役となったと言うことでしょうか。これも理屈そのものですね。
それより七種の材料となったどれかの草(冬芹、薺、ハコベなど)に絞って、その草
の状態を写生してみてはいかがですか。
 
 それから一般論ですが、よく名も無き草と言われることがありますが、私はこの世
に名も無き草という草はないと思います。すべて貴重な名前を持っています。

 現在、生物多様性が脅かされる時代、どの草も愛おしい植物です。そのささやかな
草に対して、愛情を持って俳句に詠むことは、この地球環境の保全に心を向けるきっ
かけになると思います。ただ生物多様性を乱している原因のほとんどは人間による環
境破壊であることを知るにつけ、悲しいことだと思っています。

 今月は一寸よけいなことを言い過ぎたかもしれません。

第152回目 (2011年12月) HP俳句会 選句結果
【  伊藤範子 選 】
  特選 寒鯉の水の重さに沈みをり 岩本健雨(横浜市)
   カリヨンの音はすぐ風に小春空 奈良野遊山(奈良市)
   周五郎聴きて夜寒の寝床かな      岩田 勇(名古屋市)
   硝子戸の奥まで冬日漱石忌 眞人(さいたま市)
   竹林に苔むす仏冬ざるる 一橋(横浜市)
   ミステリー買ひこみ妻の冬籠 田村幸之助(鈴鹿市)
   水鳥の黒点となり暮れにけり 雪絵(前橋市)
   本陣の白壁まぶし石蕗の花 和母(岩倉市)
   教室のひとり窓開け青写真 松井徒歩(名古屋市)
   冬蝶来異端の民の隠し井戸 松岡 美千代(愛知県)
【  矢野孝子 選 】
  特選 寒鯉の水の重さに沈みをり 岩本健雨(横浜市)
   大鋸屑の毛蟹がさごそ冬厨 梦二(神奈川県)
   満月の今中天に山眠る      悠(岡山県)
   入院の妻の小さき荷冬紅葉 龍野初心(横浜市)
   サイレンの音の重なる師走かな 安藤一紀(愛知県)
   赤みたる皆既月食霜の声 眞人(さいたま市)
   水鳥の黒点となり暮れにけり 雪絵(前橋市)
   大空へ初冠雪の伊吹立つ 兵(滋賀県)
   花八つ手羽田に残る海人の路地 栗生晴夫(川崎市)
   車座の網の繕ひ小六月 惠啓(三鷹市)
【  鈴木みすず 選 】
  特選 入院の妻の小さき荷冬紅葉 龍野初心(横浜市)
   カリヨンの音はすぐ風に小春空 奈良野遊山(奈良市)
   次々と仕事持ち寄る炬燵かな      清風(鳥取)
   ひもすがら日射し集めて柿すだれ 悠(岡山県)
   硝子戸の奥まで冬日漱石忌 眞人(さいたま市)
   ミステリー買ひこみ妻の冬籠 田村幸之助(鈴鹿市)
   水鳥の黒点となり暮れにけり 雪絵(前橋市)
   太柱磨く座敷に冬陽さす 和母(岩倉市)
   初雪や路上ライブのハーモニー 松井徒歩(名古屋市)
   車座の網の繕ひ小六月 惠啓(三鷹市)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 初雪や路上ライブのハーモニー 松井徒歩(名古屋市)
   水仙や寿ぎごとのある便り 総帆(潮来市)
   カリヨンの音はすぐ風に小春空      奈良野遊山(奈良市)
   読み返す喪中の葉書暮の秋 吉田正克 (尾張旭市)
   ひもすがら日射し集めて柿すだれ 悠(岡山県)
   入院の妻の小さき荷冬紅葉 龍野初心(横浜市)
   赤みたる皆既月食霜の声 眞人(さいたま市)
   竹林に苔むす仏冬ざるる 一橋(横浜市)
   廃村のダム湖に残る冬桜 さんせん(名古屋市)
   車座の網の繕ひ小六月 惠啓(三鷹市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、岩本健雨さん(横浜市)、龍野初心さん(横浜市)でした。「伊吹嶺」12月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


     2011年12月 伊吹嶺HP句会講評     渡辺慢房

21  寒鯉の水の重さに沈みをり  岩本健雨(横浜市)

 沈んでじっと動かない寒中の鯉からは、冬の厳しさが伝わって来ます。それを、
「水の重さに沈む」と捉えたところが発見です。句の中では言われていない暗い水
の色や、池の周りの枯草の様子、弱くなった日差しなどまで見えてくるようです。

23  入院の妻の小さき荷冬紅葉  龍野初心(横浜市)

 季語がたいへん良く利いており、入院される奥様を案じる作者の心情が、過不足
なく表れています。また、身の回りのものを必要最小限にまとめて荷造りされる、
きちんとした奥様の人柄も感じられます。おそらく、深刻な事態になるような入院
ではないと思いますが、奥様がいない間の寂しさを、ぐっとこらえておられるので
しょう。

68 初雪や路上ライブのハーモニー  松井徒歩(名古屋市)

 たいへん若々しい句です。雪はやっかいなものですが、初雪はどこかうきうきし
たものも感じさせます。寒さを吹き飛ばすように路上ライブを繰り広げる若者たち
と、足を止めてそれを見ている人たちの楽しさが伝わって来ます。クリスマスソン
グが聞こえてくるようです。

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 句会では通常、「当季雑詠」が暗黙の了解ごととなっています。特に決まりがあ
るわけではありませんが、真冬に夏の句を出したり、春に紅葉の句を出すようなこ
とは、通常行われません。

43  グランドに響く掛け声日脚伸ぶ

 この句は確かに冬の句なのですが、もうすぐ春になるという頃の、冬の終わりの
季語である「日脚伸ぶ」が使われています。

 今月のHP句会の投句・選句期間が、十二月の冬至の直前であることを考えると、
この句やはり季節外れと言わざるを得ないと思います。

 句自体の出来は悪くありませんので、もし二月の句会にこの句が出されたら、点
が入ったと思います。惜しいことです。

 折角の良い句が選に漏れるということが無くなるよう、句会に投句される際には、
このような時期的なタイミングも考慮してください。

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